ちちんぷいぷいの番組デレクターから電話が有りました。「阪急百貨店でちちんぷいぷい物産展と言う催事が有り、いっぺんだけのコーナーに出た店でイートインコーナーをやるんやけど、出えへん?」「出る!」で、決まりました。この場においては近鉄百貨店で行われた日の出製麺所の催事を何回か手伝った(ほんの少しだけ)事が有ったので、その記憶で自分でも可能かと判断してしまいました。
 しかし打ち合わせを進めるうちに自分の安易な判断を後悔する事となるのでした。それはデパートによって条件や内容が違うという事を考えて無かったからと、大量生産を甘く考えていたからでした。このことで後から随分悩まされました。
 以前、「さぬ吉」の喜多さんにお会いした時、最新設備の話が出ました。最近はさぬき麺機のこんぴらを使っているそうです。「一度見せて下さい」と話をしていてSIRAKAWAの白川君と見学させてもらった時、「イベントなどで大量生産したい時使わせて」とお願いしていました。それが偶然こんな話をいただいた時、真っ先にその時の話を思い出し、「それを使えば出来るだろう」と安易に返事をしてしまいました。
2月14日 さぬ吉での白川君 1時間1000食を誇るこんぴら 延ばしから切りまで全自動
 催事について阪急の担当者と打ち合わせをしました。デパートの営業時間が10時間、単純計算で1000食という話が出ました。1000食だと生地で180キロぐらいの計算になります。しかしながら私の現在の能力で延ばして切るのには24キロで1時間半、この計算だと7時間半かかります。
使えるのはガス栓3つ この場所が使えると? 共同厨房
 3月から毎週、さぬ吉さんに生地を持ち込みます。切り幅と厚みの調節の為です。日曜日に作り月曜日に搬入、火曜日の夜に引き取るといった事が3週間続きました。しかし試食した麺を食べた大原さんに「釜たけのうどんと違う。」と言われました。通常のうどんとの一番の違いは時間の問題です。店では前日朝練りして一晩熟成、翌朝切った麺を8時間以内で使います。しかし依頼すると前々日練り翌日切り、冷蔵保存して24時間となる事で過熟成になりすぎます。しかし工場でのタイムスケジュール的に無理なのと、こんぴらで切ると麺の長さが半分くらいになるのがおおきな違いです。この時点で随分悩みましたが、大原さんの「手伝うわ。」の一言に励まされて前日に徹夜で作る事になりました量産する最大の問題点は時間と管理温度ですね。切り終わったら8時間経ったなんて事になると最初と最後は全然違う物になりますし、管理温度で品質が低下します。
こんぴら用6キロの生地
粉を計量中 20キロで5回ミキシング 前日、踏み始めます
 前日に100キロの粉をミキシング。ミキサーの能力が20キロなので5回まわし、それを踏んで4.3キロ団子で35個に切り分けました。団子の数が少ない方が切る時間を短縮出来るのでかなり大きめです。
菊もみでは無く四角い団子 踏み延ばします うち台からはみ出ています
 当初は菊もみで丸い団子にしていたのですが、時間短縮の為、四角いままで延ばす事にしました。しかし4.3キロはさすがに大きく、打ち台からはみ出ています。普通は1個延ばすのに10分弱かかりますが、切るのを大原さんに徹夜で手伝う様お願いしたので2時から始めてぎりぎり6時に切り終える事が出来ました。その後7時に阪急に搬入、10℃に設定した冷蔵庫に保管させてもらいました。
 今回、うどんを入れるのにばんじゅうが35個、手持ちが12個しか無かったので喜多さんにお願いして「さぬ吉」さんからお借りすることが出来ました。もし買っていたら1個¥1500位しますので¥35000程の出費になるところでした。やはり何かすると初期投資が大きいです。それと今回の室温が24℃、クーラーでは冷やせません。季節も問題です。
「さぬ吉」と書かれていますね
地下搬入駐車場 IH電磁茹で釜 玉取中「もり家」森田さんとTAKAOさん
 阪急の催事に出させて貰う為には契約書を交わし、口座を開設しなくてはなりません。その事は比較的簡単に済みました。物販も伴うと品質やアレルギー品目などでかなりややこしい内容の書類を提出しなくてはなりません。
 今回もう一つの問題点は、茹でです。しかし阪急の建物が老巧化している為、安全面から防火区画の共同厨房しかガスが使えない事、そこのレイアウトではうどんを洗ったり冷やしたりする場所が無いと言う事です。そこで店内に仮設厨房を設置してくれる事になりましたが消防上からオール電化厨房になるとの事、電磁茹で麺機を二基入れてくれる事になりましたが、電力の限界9kwの茹で麺機の仕様、能力が全く分かりません。しかしながら想定で一時間100食、合計800食と言う事で話がまとまりました。ただ、茹でる能力が足らない場合は達成できないと含みを持たせて話は終わりました。

 今後、催事でうどんをされる時はやはり厨房設備が最大の問題点となるでしょう。
茹で用寸胴と3連ガス台 こんな感じで茹でてます 「日の出」三好さん「名麺堂」泉さん
「もり家」森田さんと別府さん 「釜たけ」の大原さんとTAKAOさん 熱烈マバイヤー薬師寺さんと森田さん
 今回、もう一人「うどん処 伊賀」の伊賀さんが6時に釜たけに来て搬入を「手伝って下さいました。大原さんと2人だったら相当手間取っていたと思うと、伊賀さんに大感謝です。現地には7時から搬入、早々に別府さんも来て下さいました。
 早速、大原さんが葱切り、伊賀さんが大根と生姜を仕込み、別府さんが設備のチェック。私は何をしたら・・と戸惑って居ましたら「名麺堂」の泉さん、「日の出製麺所」の三好社長、そして「もり家」の森田さんとTAKAOさんが新幹線で駆けつけてくれました。寸胴の方を三好さんと泉さんにお願いしてIH茹で釜を私と森田さん、玉取りを森田さんと別府さんが受け持ち、盛りつけをTAKAOさんと大原さんが受け持ちました。

 阪急ではホールと洗い場は阪急がスタッフを用意してくれているので、作る事だけに専念出来ます。開店20分前から茹で始め、盛りつけて並べる状況でスタートしました。早速最初のトラブルが発生、厨房と客席が完全に区切られていないのと設備が仮設なので水漏れと水が客席に流れ出しましたしかし専属のプロ掃除人が迅速に対処するのはさすがに阪急ですね。それと予測通りIH茹で釜は能力不足で寸胴組に頼らなくてはならなくなりました。行列が続いたのでひたすら作り続け、回転と茹でとの追っかけっことなりました。

 途中、何回か列が途切れましたが客席からはお客さんが途切れることなく目標の800食をクリヤー、大根が無くなったので地下で買い足し頑張りましたが予備のスダチが無くなったので6時過ぎにて打ち止め、合計925食となりました。
終わって記念撮影 右から「名麺堂」泉さん、on-senこと別府さん、「釜たけ」私とTAKAOさん、「もり家」の森田さん、「日の出製麺所」の三好さんと蒼々たる面々。私以外は皆、1000玉経験者達です。見事に個性的なメンバーが集まりましたね。
 デパートの催事では基本的に総て自分で用意することになっています。ゴミ箱から箸から何でもです。キャンプに行く時と同じと考えていただければ良いと思います。
 私の場合はベテラン強力助っ人のおかげで無事終える事が出来ましたが、初めて催事に参加するのはかなり難しい事と痛感しました。今回で1000食は可能という事が分かった事と一人ではしんどいから止めたほうが良いと言うのが分かった事が最大の収穫です。今後、チャレンジされる方がいらっしゃれば催事についてご質問は分かる限りご相談に応じます。



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